メーカーが作らないなら、
自分で安全に作るしかない。
マキタ18Vバッテリーで12V電動ウインチを動かす。その配線設計・保護回路・限界値を、現場の電気屋が5年間の実運用データから公開します。工作の記録ではなく、設計の記録です。
このチャンネルで一番多い質問です。答えは「700Wが必要」ではなく「700Wまで出せる」。定格はストール(動かなくなる最大負荷)時の上限値であって、常時消費する電力ではありません。
つまり、コードレス化で失われるのは「最大牽引力」であって「動くかどうか」ではありません。バッテリー駆動の実効牽引力は定格の数分の一。逆に言えば、限界を超えるとバッテリーの保護回路が先に落ちる──それが結果的に安全マージンとして機能しています。ただし、それに頼った運用は設計ではありません。
手持ちのウインチ、電源の容量、実際に引きたい荷重を入れてください。必要牽引力から消費電力を逆算し、電源側が耐えられるかを判定します。同じ100kgでも、台車で水平に引くのと斜路を上げるのとでは必要な力が10倍以上違います。そこまで含めて計算します。
計算モデル:消費電力 ≒ 無負荷損(定格の約10%)+(定格入力 − 無負荷損)×(必要牽引力 ÷ 定格牽引力)。DCモーターの電流がトルクにほぼ比例することを利用した近似で、実測120W前後という値に合わせています。
注意:定格牽引力はドラム1層目の値です。ロープを多く巻いた状態では実効牽引力が2〜3割落ちるため、定格比は70%以下に収める前提で構成してください。また突入電流は瞬間的に100A級まで跳ね上がります。表示値は目安であり、最後は必ずクランプメーターで実測してください。
一人親方の現場では、重い物を持ち上げてくれる人は来ません。
室外機、モーター、資材。呼べる応援はいない、でも今日中に上げないといけない。腰を痛めれば来月の仕事が消える。だからウインチを持ち込みたい。けれど現場にAC100Vが来ているとは限らないし、発電機を担いで階段を上がるのは本末転倒です。
手元にはマキタの18Vバッテリーが何本もある。工具は全部これで動いている。ならウインチも──というのが出発点でした。5年前のことです。
やってみると、動きました。ただ「動いた」で終わらせなかったのは、自分が電気工事を生業にしているからです。電流が流れる限り、必ず発熱と電圧降下がある。配線が細ければ焼ける。リレーは接点が溶着する。バッテリーの保護回路は落ちる。そのひとつひとつを、実際に壊しながら測ってきました。
メーカーが製品として出してくれるなら、私たちは黙ってそれを買えばいい。でも出ない。理由もはっきりしています(→次章)。だったら、できるだけ安全に、理屈を分かった上で自分で作るしかない。このサイトはそのための記録です。真似することを勧めるためではなく、真似するなら最低限ここまで理解してほしい、という線引きを共有するために置いています。
前の章で書いた「呼べる応援はいない」を、そのまま撮ったのがこの動画です。人手があれば数分で終わる作業を、一人でやるとどうなるか。ウインチを使えば降ろせます。ただし、降ろせることと安全であることは別です。
荷が動き出した瞬間、止められる手段が何本あるか。ロープの延長線上に立っていないか。ここを設計していない状態で真似をすると、本当に危険です。だから【マネ厳禁】と付けています。
なお、作業場の中でならもっと安全なやり方があります。鉄骨と単管パイプで簡易ホイストを組んで、100Vの電動ウインチで吊る方法です。約200kgの軽トラ荷台を1人で降ろした実例 → にまとめました。
技術的にできないからではありません。作れるけれど、売れない・売ってはいけない理由が3つあります。ここを理解しないまま真似をすると、危険なのは自分自身です。
ウインチは「吊る・引く」道具です。落下すれば人が死ぬ。メーカーが出す以上、ワイヤー破断・ブレーキ不良・誤操作まで含めた全責任を負います。バッテリーの残量低下で巻き上げ中に停止する可能性がある機器を、荷役用として保証するのは現実的ではありません。
12Vウインチは起動時に100Aを超える突入電流が流れます。一方でマキタのバッテリーは、電動工具として安全な範囲に電流を制限する保護回路を持っています。ウインチを定格で回そうとすれば、この保護が繰り返し作動する。「頻繁に止まる商品」は商品になりません。
突入電流対策(ソフトスタート回路)、極太配線、大容量コンタクタ、熱設計、過負荷検出。全部やれば安全な製品にはなりますが、原価は跳ね上がり、電動ウインチ本体より高くなります。市場規模を考えれば商品企画は通りません。
違いは、責任を負うのがメーカーではなく自分だということだけ。だから配線サイズも、ヒューズも、リレーの容量も、「動けばいい」ではなく「壊れ方まで設計する」必要があります。
DC12Vの世界では、AC100Vと同じ仕事をするのに約8倍の電流が流れます。「AC100Vで使っていたVVF1.6mmで足りるだろう」は、ここでは通用しません。
主回路(赤・黒の太線)と制御回路(緑の破線)は、別の系統として考えます。リモコンのスイッチが流すのはリレーのコイル電流だけで、モーターを回す大電流はリレーの接点を通ります。太くしなければならないのは主回路であって、リモコンまわりではありません。
| 断面積 sq | AWG目安 | 連続許容電流の目安 | 12Vウインチでの用途 | 太さ比較 |
|---|---|---|---|---|
| 1.25 | 16 | 約 19 A | 動力線には不可(制御・信号のみ) | |
| 2.0 | 14 | 約 27 A | 動力線には不可 | |
| 5.5 | 10 | 約 49 A | ごく短距離・軽負荷のみ(推奨せず) | |
| 8.0 | 8 | 約 61 A | 最低ライン。短距離の主回路 | |
| 14 | 6 | 約 88 A | 推奨。バッテリー〜リレー〜モーター間 | |
| 22 | 4 | 約 115 A | 余裕を取りたい場合・長め配線 |
※「太さ比較」の図は、導体の見かけの太さを実寸比で描いています(断面積が4倍なら直径は2倍)。1.25sqと22sqでは、面積で17倍以上の差があります。
※ 数値は絶縁電線を単独・気中に敷設した場合の一般的な目安です。周囲温度、束ね方、絶縁体の耐熱クラス、接続端子の性能で大きく変わります。実機では必ず実負荷での発熱を手で触って確認してください。10分連続で触れないほど熱いなら、その配線は細すぎます。
正転・逆転を切り替える主回路のリレーは、連続電流ではなく突入電流で選びます。常用60Aだから80Aリレー、では余裕がありません。接点は開閉の瞬間にアークが飛び、そこで少しずつ削れ、最後は溶着します。溶着=スイッチを離してもモーターが止まらない状態。これが最も危険な壊れ方です。
80A級で動くのは事実ですが、5年使った実感としては250A級のウインチ用コントロールボックスに置き換えるのが正解でした。専用品は接点材質もアーク対策も違います。
よくある誤解が「モーターを守るためにヒューズを入れる」。違います。ヒューズが守るのは電線と、その先にある人と建物です。だから容量は、モーターの定格ではなく使った電線の許容電流以下で選びます。
8sq(約61A)を使ったなら60A、14sq(約88A)なら80A。ここを大きくすると、短絡時に守るものが何も無くなり、燃えるのは配線です。バッテリー直近(プラス側の根元)に必ず1つ入れてください。
いま一番見られているのがこの1本です。理屈だけでは伝わらない「実際に動いている音と速度」が入っています。まだなら、ここから見てください。
順番には意味があります。特にSTEP 4より前に電源を繋がないこと。配線が完成する前の通電が、事故の大半の原因です。
まず「引かれる力をどこで受けるか」を決めます。ウインチが引く力より、それを固定しているボルトの方が先に負けます。2000LB級なら約900kg、4000LB級なら約1800kg。板厚・ボルト径・母材の強度をここで決めてしまいます。木材への直付けは避けてください。
マキタ18Vバッテリーは満充電で約20V、放電末期で約15V。12Vウインチにそのまま繋ぐ構成と、DC-DCコンバータで12Vに落とす構成があります。前者は電圧が高いぶん回りますが、モーターにもリレーにも定格外。後者はコンバータの電流容量(30A級)が上限になるため、重負荷では足りません。用途を決めてから選ぶのが正解です。40Vmaxバッテリー+コンバータという選択肢もあります。
バッテリー端子アダプタから出た+線の、できるだけ根元にヒューズホルダーを入れます。次に主電源スイッチ(または非常切離し)。この時点で「一手で全部止められる場所」を必ず作ってください。リレーが溶着してモーターが止まらなくなったとき、最後に頼るのがここです。
主回路(太い線・大電流)と制御回路(細い線・数A)を、物理的にも頭の中でも分けて考えます。リモコンのスイッチが直接流すのはコイル電流だけ。太い電流はリレーの接点を通ります。正転側と逆転側のコイルが同時に励磁されない配線になっているか、通電前に必ずテスターで導通確認を。
軽い荷から段階的に負荷を上げ、各段階で停止して端子・リレー・配線・コネクタを手で触って温度を確認します。熱を持つのは決まって「接触抵抗が大きい場所」=圧着不良・端子の緩み・細すぎる線。ここで見つかる問題が、5年後の焼損を防ぎます。デューティ比(間欠運転)の感覚もこの段階で掴んでください。連続巻き上げは30秒〜1分、その後は休ませる。これが長持ちの条件です。
「これを買えば動く」ではなく「なぜこの容量なのか」を添えています。同等品でも構いませんが、電流容量だけは下げないでください。ウインチ本体は大きいほど良いわけではありません。50kg付近の荷なら2000LBS級で十分です。
下のリンクは、すべて自分が実際に買って使っている部品です。「安いから」ではなく「なぜこの容量なのか」で選んでいます。同等品でも構いませんが、電流容量だけは下げないでください。ボタンから商品ページへ移動して、スペックと端子サイズをご自身の目で確認してから判断してください。
50kg前後の重量物を扱うなら、まずこれ。4000LBS級より本体が軽く、消費電力も小さいので、バッテリー駆動との相性はこちらが上です。持ち運んで現場ごとに据え付ける使い方なら、重量差がそのまま体力差になります。軽い荷に大きすぎるウインチを選ぶ意味はありません。
この1台を実際に見てみるAMAZON →100kgを超える荷や、斜路・階段など必要牽引力が跳ね上がる条件で余裕を取りたい場合の選択肢。減速比が大きく、同じ負荷なら電流が下がるのが利点です。そのぶん本体は重く、持ち運び前提の現場では負担になります。用途で使い分けてください。
余裕を取りたい人はこちらAMAZON →ワイヤーからの交換用。破断時の跳ね返りがワイヤーより格段に軽いのが最大の利点で、これは安全に直結します。軽くて手で扱えるため、ロープを引き出す作業が速い。錆びず、手を切らない。ウインチ本体より先に、ここに金をかける価値があります。ただし熱と紫外線には弱いので、ドラム周りの発熱と保管場所には注意を。
安全に効く部品を見てみるAMAZON →今の本命構成。汎用80Aリレーで組むより、ウインチ専用の250A級コントロールボックスの方が接点寿命が桁違いです。突入電流でアークが飛ぶ前提の設計になっているため、溶着トラブルが激減しました。予算が許すならここに使ってください。
本命の部品はこちらAMAZON →動画で分解した80A級はこのタイプ。安価で入手性が良い反面、消耗品と割り切る必要があります。作動音が変わってきたら交換のサイン。予備を1個ストックしておくのが現場での鉄則です。
予備を確保しておくAMAZON →最も手軽な入口。持っている18Vバッテリーがそのまま使えます。ただしアダプタ内部の配線と端子が電流のボトルネックになりがちなので、通電後の発熱確認は必須。重負荷を狙うなら次のコンバータ構成へ。
まず試すならこれAMAZON →40Vmaxバッテリーから安定した12Vを作る構成。電圧が落ちてもモーターへの供給が安定するのが最大の利点です。上限は30A/360Wなので、重量物の全力巻き上げには足りません。中負荷の常用機として組むなら最適解。防水筐体は現場で効きます。
電源を強化するAMAZON →上のコンバータとセットで使う入口側。40Vmaxは同じ電力なら電流が約半分になるため、アダプタ・配線・端子の発熱が明確に減ります。18V構成で熱に悩んでいるなら、こちらへの移行を検討する価値があります。
40V化の入口を見てみるAMAZON →テスト用・実験用として。純正を実験台にしたくないという理由での選択です。実運用では容量に余裕のある純正を推奨します。互換品は保護回路の挙動が製品ごとに違うため、限界域のテストには使わないでください。
実験用に用意するAMAZON →逆方向の変換。12V電源側から18V系の機器を動かしたい場合の応用パーツです。車載バッテリーやポータブル電源を電源にして、マキタ系の機器や制御回路を動かす構成で使います。
応用パーツを見てみるAMAZON →これは推奨パーツではありません。運営者が実際に使用しておらず、レビュー件数も少ないため、おすすめできる商品とは限りません。ご購入はご自身の判断でお願いいたします。
最近は、はじめからバッテリー駆動を前提にしたウインチも流通するようになってきました。「自作せずに買えるなら、そのほうがいい」というのが正直なところなので、選択肢として置いておきます。
ただし、このサイトで扱っているのは5年間実際に使って、壊して、測ったデータです。使ったことのない製品について、同じ精度で語ることはできません。検討される場合は、牽引力の定格値だけでなくバッテリーの容量・保護回路の挙動・連続使用時間・ブレーキの有無を必ず商品ページで確認してください。第2章と判定機の考え方は、市販品の評価にもそのまま使えます。
当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。Amazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。リンク先の価格・仕様は変更される場合があります。購入前に必ず商品ページで電流容量と適合をご確認ください。
5年間で実際に起きたトラブルと、その時の切り分け手順です。症状をタップして開いてください。
最も危険な故障です。ただちに主電源を切るかバッテリーを外してください。
直ちに電源を遮断。煙が出た場合は再通電しないでください。
自作ウインチの修理をきっかけに、リレーそのものを調べ直しました。動画配信に先駆けた予習として、基本と、実際に手を動かして分かった疑問をまとめます。
ウインチの中を開けると出てくる、小さな黒い箱。そこには 30・85・86・87・87a という5本の端子があります。数字だけ見ると難しそうですが、コイル側と大電流側に分けて考えると、仕組みは驚くほど単純です。
この2本は、内部のコイルを動かすための端子です。電気を流すとコイルが電磁石になり、その磁力で接点を「カチッ!」と動かします。
つまり85・86に流れる電気そのものが、モーターを回しているわけではありません。小さな電気で電磁石を作り、大きな電気を流す接点を動かす。これがリレーの基本的な役割です。慣例として86が+、85が−(ボディアース側)です。
30番はCOM(共通端子)。電源が来る入口です。コイルのON・OFFで、30番につながる相手が切り替わります。
コイルOFF → 30と87a が接続(87a=NC/通常時つながっている接点)
コイルON → 30と87 が接続(87=NO/通常時は開いている接点)
ものすごく簡単に言えば、5極リレーとは「電気で動かす切替スイッチ」です。
交換用にAmazonで 12V・80A と書かれたリレーを買いました。ところが、古いリレーと並べてみると──同じ80Aクラスなのに、端子の太さが全然違う。
近くのカー用品店で一般的な平型端子を確認すると、店頭にあった250型は DC12V・200W以下。電流に換算すると 200W ÷ 12V ≒ 16.7A です。一方、今回検討している電源は12V・360W。単純計算で 360W ÷ 12V = 30A。
リレー本体に「80A」と書いてあるだけで判断していいのか。少なくとも私は、数字だけでは判断しないほうがいいと考えています。
大容量リレーには、端子そのものを大きくしている製品があります。制御側には 6.3mm・250型、大電流を扱う主回路側には 9.5mm・375型 のような大型平型端子を使うタイプです。
| 端子 | 役割 | 流れる電流 | 端子サイズの例 |
|---|---|---|---|
| 85 / 86 | コイル(制御側) | 数十mA〜1A程度 | 6.3mm・250型 |
| 30 / 87 / 87a | 接点(主回路側) | 数十A〜100A超 | 9.5mm・375型など |
リレーだけ80A対応でも、途中に使う端子や配線の容量が不足していれば、そこが弱点になります。リレー・端子・電線・ヒューズ・実際に流れる電流。これらを切り離さず、ひとつの回路として考える必要があります(→ 第2章の許容電流表)。
リレーに電気を入れて「カチッ!」と音がした。それだけで正常と判断していいのでしょうか。コイルが正常に動いていても、30・87・87a側の接点が焼けていたり、接触抵抗が大きくなっている可能性があります。音が鳴るのはコイルが動いた証拠であって、接点が正しく通電している証拠ではありません。
※ 測定は必ずバッテリーや電源を外した状態で行ってください。テスターのリードや工具が端子間に触れると短絡します。大電流側(30・87・87a)は太く、通電中は素手で触らないこと。ショートや逆接続は、リレーと配線の焼損・火災の原因になります。
今回の検証で購入した5極リレーです。安価で入手性が良く、5極(1C接点)の基本を学ぶには手頃。ただし本文のとおり、同じ「80A」表記でも端子サイズは製品ごとに違います。購入前に主回路側の端子幅(6.3mmか9.5mmか)を必ず確認してください。ウインチの主回路に使うなら、端子の大きい製品か、専用のコントロールボックスを選ぶほうが安全です。
端子の太さを確認するAMAZON →当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。Amazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。
実機の動き、音、発熱。文章と図では伝わらない部分は動画で確認してください。
検証実験の新しいデータは、まずYouTubeで公開しています。
アトムテックチャンネルの全動画から、再生数の多い順に自動で並べています。順位は毎日入れ替わります。
検証データはまずYouTubeで公開しています。